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仮想敵

存在しない敵というのは、潤滑油となりうる。存在しない敵を媒介することで、絆が生まれる。

たとえば、「友達がお金かえしてくれないんだよね」と目の前の人に言ったときに、たいていは「え、最悪じゃん」という同調が返ってくる。ここでいう仮想敵はその友達(Xとする)にあたる。Xは実在していても実在していなくてもいい。ただ、そこに媒介として存在するだけだ。言ってしまえばXが友達という形式を取らなくてもいい。

仮想敵とは直接言い難いが、仮想的に生成されたペルソナはアンケートの集計結果などに出現する。つい先日Twitterで賑わった、20代の女子が憧れる“理想の専業主婦”(20代の女子が憧れる“理想の専業主婦”のイメージが話題に | ガールズちゃんねる - Girls Channel -)がそれだ。

集計された結果があたかも一人の人物、あるいはアンケート対象者の総意であるように、認識されてしまっている。メディアがそれを狙ったかどうかは別として、Twitter界隈では「現実を甘く見すぎている」という論調が多い。あくまでも理想であって、そうなるだろうと高をくくっているわけではないし、誰だって楽したいのは当然だ。批判の対象は仮想的に作られた単なるイメージであって、実在する対象ではない(**さんというような)。

その仮想的なイメージを媒介として、話題が広まる。そのイメージに対して「信じられない!」と怒りを露わにする人も少なくないようだ。その怒りは、どこに向けられているんだろう。メディアが狙ったわけではないにしても目的がよくわからない。これでは炎上マーケティングと一緒ではないか。話題作り、友人間での話題に最適だったとしても、なんだかやるせない気持ちになるのは、私だけだろうか。

一昨日は、このニュースを見たせいで気持ちがだいぶ滅入ってしまった。なぜ落ち込んでしまったのかはいまいちわかっていないが、メディアがやりたかったものがわからず、もしかしたらただ煽っているだけなんじゃないかという不安が原因だったのだろう。

情報は与えられるものではなく、自ら取りに行くものなのかもしれない*1。こうして、私はメディアに対する興味を一段と失うのだった。

*1:情報は与えられた時点で、編集されているのでそこに編集者の意向が含まれる。意向は情報の意味を変化させてしまう。だからこそ、自ら手を伸ばして自分に適切な情報とその意味を得る必要がある。