駄文をつらねるウェブログ

駄文・乱文・残滓

だれでも持っている弱さを共有する

他者と共有されるだけで、こんなにも気持ちが変化するのか。

私は「わたしは人間ではない」と自分に言い聞かせて慰めていた時期があった。3年間くらいだっただろうか、コミュニケーションが苦手だということに悩んでいた。笑うことも、相手と共感することも、自分が発する言葉が嘘臭くて。この嘘臭さは今でも悩みのひとつなのだけど。

誰にも打ち明けなかった悩みにある人が「大丈夫ですよ」と言ってくれた。

「だれでもそういう悩みはありますから」と。

「ああ、自分はまだ人間でいられるんだ」と、そのとき安心した。感動するような、心が震えるようなものではなかったけれど、じわぁとゆっくり自然に広がった。しこりが取れたように。

人間であることは誰がどうみてもあたりまえだったけれど、人間ではないと思い込むことで何か障壁を周りに対して張っていたんだと思う。エヴァ的に言えば、ATフィールドかな。その壁が今瓦解した気がする。

誰かに依りかかるということは、相手に負担をかけるということであり、下手をすれば自分の闇にともに沈んでいってしまう。道連れ。彼はそうはならない強さを持っている。確信はあれど、道連れにしてしまいそうな不安は持ちながらも、彼に依りかかる。

恥ずかしながら、依り所になってしまっている。本当に申し訳ないと感謝しながら、私はもう少しだけ依りかかっていたい。そして、機さえあれば彼の依り所になれたらと思う。

ぼくの思いがあなたに伝わらない理由(彼に送る詩)

「どんなに言葉を連ねても伝えられない」

何年も出していないような大声を出した。大声なんてめったに出さないものだから、すごく喉が痛かった。目の前にいる彼女は微動だにしなかったから、もしかすると全然音量はでていなかったのかもしれない。

ぼくの思いを彼女に伝える言葉がほしい。どんなに喋っても伝わらない。どうしてなんだ。僕はこんなにも彼女を救いたくて仕方ないのに。彼女の心に響かない。

「どうしたらいいんだ」

僕は崩れるようにして彼女に抱きつく。彼女を救いたいのに、声はあたかも僕が救いを彼女に求めているかのように響いた。思いがせき止められずに身体にあふれでてしまった。次の瞬間。

ふっと彼女の感触がなくなる。

「ああっ!」

さっきまで温かみを感じていた、彼女は一瞬に崩れてしまう。まるで積み木のように。僕の腕から彼女のパーツがこぼれ落ちる。慌てて水を掻くように、彼女を拾い集めようとする。だけど、僕の手を弄ぶようにすり抜けて、地面に落ちた。彼女が地面に落ちてカラカラとした音を立てる。

ほんの少しだけ、彼女の音は響いていたけれど、すぐに静寂が訪れる。

何が起こったかすぐに理解できなかった。でもどこかでその状況に納得していた気がする。僕がしたことはなんだったんだろう。なにか大変なことをしてしまったという自覚を覚えて、後悔に打ちひしがれて泣いた。

彼女が落ちた地面に、自分の涙がポタポタと落ちていく。涙は案外流れなくて、地面に吸われてただ黒くなっただけだった。それを見て僕はまた悲しくなる。この程度の思いだったのかと。

最後の手段だった。この思いを伝えたくて、言葉では表現できなくて、その不甲斐なさと切なさが、自分で抱えきれなくなった。だから彼女に抱きついてしまった。

「そうだよな。 人形なんだよな」

涙も枯れて体を起こして、崩れた彼女を見つめて、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。声という音が出ていたかどうかは、わからない。

そう、彼女は人形だった。僕の手が届かない人形。どんなに彼女を思ってもそれは人形で、僕の思いを受け取める器がなくて、ただただ僕はその思いを、この場に垂れ流していただけだった。

抱きついたとき、ひやりとする冷たさを感じたのは、彼女からの拒絶ではなかった。彼女は人形だった。だから当然。僕の思いが伝わらないのも当然だ。彼女は人形だったのだから。