ことばの合間の逡巡、そして。
A:あれ? どうかしました?
B:えっと。
B:あ
B:なんでもないですよ
B:うん
B:なんでもないよ。
A:(気になる)
たしかにそこにあるものが隠されてしまっている、ごまかされてしまっている。普通ならそう思うけど、いたずらだったら?
割とかわいいと思う。いわゆる思わせぶりな行為。
物憂げな表情を見せて、「ううん、なんでもないの」と頭を振る。ステレオタイプだけど。
空っぽなのに、相手は手の上で踊ってしまう。なんて卑劣なんだろう。でも、空っぽなのに気になってしまうのはなんでだろうね。
相手はそれくらいわたしのことが気になっているんだよね、きっと。だって空っぽなんだもの。
「あれ」とか「その」とか「ねぇ」とか「あのさ」とか「うーんと」って言葉ってとってもかわいいと思う。言いたくて言ってるんじゃなくて、ポロッと言葉がこぼれ落ちている感じ。これらの言葉をしゃべるなって命令されたら、全然できない。それくらい無自覚に出ちゃう。だから、かわいい。私の発した言葉なのに、私の意識の外にある。
さあ、考えてもごらんよ。じゃあ、誰が喋らせてるんだろう? きっと目の前にいるあなただよ。