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ストレスとは何か

ストレス

数年前、精神的に苦しくなると「ストレスっ!」とときどき声を出していた。ストレスという言葉は、今さまざまな場所で見受けられる。「ストレスを感じてつらい」とか「現代社会はストレスを……」という記事や書籍はたくさんある。もちろんウェブにも。

体性感覚とその属性

私は、以前にも書いていたが、体性感覚は言葉でしか知り得ないという話を書いた(腹痛の記事だったか)。まぁ、外部の皮膚感覚であれば、相手を直接つねるなどして伝えることができるだろうが、内臓の気持ち悪さとかお腹の痛みなどについて共有できるのは言葉があるから。同様にして「ストレス」は言葉にしないと共有できない。

以前、腹痛について医師にうまく説明できなかったと書いた。なぜできなかったのかと考えれば、どのようにして共有すればいいのかわからなかったからだ。「どういう症状で?」と聞かれたときに「ここらへんが痛い」ということしか回答しなければ、語った分しか医師は理解できない。ポイントは「場所」「痛みの質」「程度」「状況(時間)」「期間」くらいだろうか。「頭が」「ズキズキと」「仕事が手につかないくらい」「お昼ごろ」「1週間前から」と答えれば上々か。語り慣れていないと、何を言えばいいのかわからない。ただ痛いということを伝えるしかない。

質問による気付き

他人からの質問に対して「痛み」が徐々に分化していくのかもしれない。「痛み」が「場所」という属性を持っていたり、「質(ずきずき、ずきんずきん、ずーんと)」という属性があったり。これらは、質問によって明らかにされる。聞かれて初めて「あ、ズキズキと痛むな」と痛みに対する気付きがあったりする。他人からの質問によって気づきが生まれ、それを語るときに初めて整理されることがあるということだ。

一度語ってしまえば、その言葉に固定される。内蔵感覚としての〈頭がズキズキと痛い〉が、言葉としての《頭がズキズキと痛い》に投射されることになる。ちょうど、他人の見ている〈赤〉が私の見ている〈赤〉と等しいか知ることができないように。

ストレス

ストレスも内蔵感覚のように、当事者にしか観測できない。ストレスが溜まってきたと感じるのもその当事者だけだし、他人は当事者の振る舞いを見て「ストレス溜まってんな」と思う程度である。頭をガシガシと掻きむしる姿はその典型だろう。

ストレスが振る舞いに出る場合は、他人がある程度察せるので良いが、振る舞いに出ない場合あるいはわかりやすい振る舞いにならない場合、他人がそれを察するのは困難になる。「あの人今日は変だなぁ」と「あの人今日は大変そう」の間には、「あの人いつもと違う」と「あの人の状況への共感」という差がある。つまり、内臓感覚やストレスは他人から察しづらいのだ。

そして、体性感覚は言葉で表現することでしか積極的に伝えることができない(ここでは、顔色が悪いなどの外見の変化を消極的な表現としている)。さらに、言葉で伝えるためには他人からの質問と他人へ語ることの修練が必要だ。

私の感じるストレスと、ストレスの定義

冒頭で、「ストレスっ」と叫ぶ話をした。あの時点で私はストレスを「嫌なこと」というふうに捉えていたのだろう。しかし、私の感じる「ストレス」とストレスの定義には乖離があった。

ストレスとは何か? - 意外と知らないストレスの本当の姿について

上の記事によると、ストレスは嫌なことだけではないらしい。

「ストレス」という言葉が別のものになっていないか

さらに、ストレスという言葉に「悪いイメージ」や「払拭しなければならないという義務感」が結びついていたとしたら、問題だ。「私は今ストレスを感じている。だからストレスを無くさなければならない」という考えは、「ストレス」という言葉に全力でより掛かりすぎている。この独自解釈の「ストレス」が「外部から与えられるもの」だったとすれば、なおのこと問題だ。もしかすると、あなたがストレスと感じているものは自分の内面から湧き出てくるものなのかもしれないからだ。内部で起こっていることを外部で起こっているものと勘違いするのは、原因を見誤っていることになる。このストレスに対する認識のずれを減らすためには、さまざまな人に話すことしかないだろう。

ストレスという言葉が便利すぎて思考停止に陥っていないだろうか。今感じているストレスが「不安なのか」「焦りなのか」「原因はどこにあるのか」などのどのカテゴリに属しているのか検討しないかぎり、ただただ「ストレスは取り除かなければ」という概念的なことだけ思っていは何も進まない。

他人と話す

他人と話すことで言葉の認識についてズレは少なくなっていくし、語ることで頭が整理される。「弱みを見せるなんて」と思わずに積極的に話していくことがストレスを排除するための一歩になるかもしれない。