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駄文・乱文・残滓

言葉の即時性

  • 話し言葉というのは、すぐにきえてしまう。聞き逃がせば、聞き返さなければ、泡のように消える。

昔は、インターネット上で愚痴をこぼしたり、誰かの陰口を叩いたりすることが見受けられたが、今では逆になってきたという話を聞いた。インターネット上で不用意なことを発言すると炎上するので、リアルの場で愚痴や陰口を言うようになってきたらしい。リアルの場での愚痴は昔からも変わっていないだろう。インターネット上の発言の性質が変わってきたのだ。きっと。

その背景には、言葉の即時性があると考える。音声としての言葉は、発した瞬間でしか意味を成さない。録音でもしないかぎり。発話の一瞬で消えるという性質は、記録には向かない。記録に向くのは書き言葉だ。録音することで記録はできるが、それを書き言葉に直すのは骨が折れる作業になる(そういう専門職の人もいるくらいに)。

愚痴や陰口は、実は発することが目的じゃないのだろうか。記録する必要はない。だから音声として現実で言葉にして話すのだろう。であれば、揮発性のあるチャットシステムが存在すれば、愚痴や陰口などのストレスのはけ口になるのではないかと思った。

3つしか履歴が保存されないチャットが具体例として挙げられる。サーバー上には履歴が保存されない。相手と自分の話した書き言葉が3つしか保存されない。他の履歴はすべて当人たちの頭の中に保存されるというシステムだ。

LINEを開くとき、以前話した内容が履歴として残っていて、不思議な思いをすることがある。ときにはこんなこと話したっけと思ったり、ときには約束したけど忘れていたと焦ったりする。以前の話題に、後ろ髪を引かれながら今話したい話題をするのは、少々気持ち悪い。微妙な気持ちを、「3つしか履歴が保存されないチャット」で解消したい。「3つしか履歴が保存されないチャット」であれば、「明日早いので寝ます」「おけー、おやすみ」「おやすみ」くらいの3つしか履歴に残らないので、次の話がしやすいと思われる。変な気持ちにならない。

私たちの生活は日に日に便利に変化している。LINEやSkypeを見れば、いつころどんな話題を相手に話したか分かる。果たして便利さは本当に必要だろうか。便利の裏側にはいつでも息苦しさが息づいている。